ポリフェノールの渋味の話
Q ポリフェノールって何?
大事な「渋味」のお話だよ!
ポリフェノールとは
- ポリフェノールとは、植物が産生する二次代謝産物(成長には直接関与しませんが、置かれた環境下での生存に必要)のうちで、フェノール性の水酸基を複数含む化合物です。
- 複雑に化学式が異なる化合物群の集合体であり、およそ8,000種類が植物界に存在します。
- ポリフェノールは食品の苦みや渋味の成分です。(ワイン、ウーロン茶、柿など)
ポリフェノールの長期摂取と単回摂取
- 長期摂取では、心血管系疾患リスクの低下に寄与することが、多数の研究により立証されています。
- 単回摂取では、数時間後にすでに血管内皮機能・耐糖能(血糖値が高くなった時にそれを正常値まで下げる能力)の増進といった抹消臓器への作用だけでなく、脳血流量の増加や作業記憶の改善などの脳機能への作用が認められています。
Q長期摂取と単回摂取による作用って?
長期摂取による作用→日常的に食べ続けて得られる作用
単回摂取による作用→食べる都度得られる作用
単回摂取と「渋味」
- 渋味を有する重合ポリフェノール類(渋味成分)を食べて「渋味」を感じると
①口を含む上部消化器官によって瞬時に認識され
②その刺激が中枢神経系に伝達され、脳が活性化すると
③この刺激は脳幹を発火させ、脳幹を起始点とする交感神経活動を亢進し
④循環刺激やエネルギー代謝などの抹消組織に対する有用な作用を発揮 - 摂取数十分後に発現する脳血流量を伴う作業記憶の改善については、口を含む消化管上部における「味」を介した作用であると推察されます。
Qどうして「渋味」を感じると作用するの?
渋味が生体にとってストレスになり、交感神経活動が亢進することが示唆されています。交感神経活動の亢進は、ストレス負荷時に起こることが良く知られています。
毎日コツコツ食べよう
- 毎日少しずつお召し上がり頂くことが大切です。
- ポリフェノールは、体に留めておけません。摂取後、2日くらいで排出されることが報告されています。摂取後、胃及び小腸の通過時間は約2.5~3時間であり、大腸に到達した後に約30~40時間かけて排出されることが報告されています。
<参考文献>
- 「食事由来ポリフェノールの機能性研究の展望と社会実装化ポリフェノールの摂取目安量の策定へ向けて」寺尾純二 越坂部奈緒美(化学と生物 Vol.59, No.5, 2021)
- 「フラバン3-オール摂取後の食後の生理学的変化のメカニズムの可能性」越坂部奈緒美 寺尾純二(Nutrition Reviews, Vol.76, No.3, 2018)
- 「食品中のタンニン;渋みと苦味の分子認識への洞察」S.Soares, 他(Molecules, 25, 2590, 2020)
- 「フラバン3-オールの単回経口投与は、血漿および室傍核におけるストレスホルモンの上昇でモニターされるストレス応答を誘発する」Y.Fujii, 他(Neurosic. Letter, Vol.682, 106, 2018)